花粉症の治療法、根本的な治療の「減感作療法」と一般的な「初期療法」
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花粉の季節は、毎年訪れます。興味深い本に出会ったので、花粉症について調べてみることにしました。 その中で、花粉症を根本から治すことができる「減感作療法」という方法があることを知ったので、 もしかしたら、花粉症と「さよなら」できるかもしれないという期待を持って、読んでみました。
私は、知りませんでしたが、この本で紹介されている減感作療法は、アレルギー治療の分野では、 昔からある治療法で、根本的な治療法であることは、広く認められているそうです。 以前は、時間や手間がかかり、成績はそれほどでも無いことから、これまであまり広がっていなかったようです。 「『あなたの知らない花粉症の治し方』大久保公裕著 (2009)より」
書籍が発行されてから少し時間がたっているので、本を参考に、状況の変化の確認を含めて、 インターネット上に存在する情報を加えてまとめてみたいと思います。
花粉症はどうして直らないのか
なかなか直らない原因は、一言に花粉症と行っても、人それぞれ、原因も、症状も異なります。 しかし、一般の市販薬や病院では、同じ対応になっているのが原因です。
個人差
「朝、起き抜けのくしゃみ」この朝の発作は、「モーニングアタック」と呼ぶそうです。 室内で、布団に入っていて花粉を吸ったわけでは無いのになぜ起こるのか? また、この症状が起きない人がいるのはなぜか?症状は、人それぞれ異なるからです。
同じ外界の変化に対しての反応は人それぞれ異なります。花粉症の症状である涙や鼻水などは個人差が大きく、 その個人差の解明が花粉症治療の重要なポイントになると著者は述べています。
治る花粉症と治らない花粉症がある
花粉症には、「治る(根治する)花粉症」と「根治の難しい花粉症」があります。 治らない花粉症だとしても、症状を軽減することはできるそうです。
花粉症のタイプを知る
鼻水やくしゃみの症状のほうが強ければ耳鼻咽喉科、目の痒みの方がひどければ眼科で、 もしくは、両方で診療を受けるのが適切です。 両方の診療科で診察する際の情報共有に仕組みや手順は、本では紹介されていなかったので、 初めに診察を受けた病院で尋ねるのが正解だと思います。
花粉症の特徴
- 続けざまに出るくしゃみ
花粉症のくしゃみは1度出ると何回も出る
- 水のようにサラサラした鼻水
風邪の場合の鼻水は、日を追うごとに徐々に粘っこくなるが花粉症は、水っぽいまま。
- 頑固な鼻づまり
- 目や喉の痒み
目や喉に痒みがあれば、少なくとも風邪ではありません。通年性アレルギー鼻炎でも同じ症状が出る。
- 少し熱っぽかったり、頭痛がする。
- 頭がぼーとして集中できない。
- 毎年、同じ時期に症状がでる。
- 家族の中にアレルギー体質の人がいる。
花粉症かどうかの判断
花粉症の3大症状と呼ばれる、鼻水、鼻づまり、くしゃみは、春先に多いかぜ症候群でも同じ症状がでます。 通年性アレルギー鼻炎など、他のアレルギー症状でも同じ症状がでます。
とは言え、鼻の症状に加えて、目や喉に症状が出ている場合、 かなり花粉症の(春先であったら、スギ花粉症の)可能性が高いです。
花粉症は、さまざまな植物の花粉が原因で起こりますが、どの花粉症も突然発症します。 昨年まで症状がなくても不思議はありません。 鼻や喉の症状がひどければ、耳鼻咽喉科、眼の症状がひどければ、眼科を受診します。
通年性アレルギー鼻炎とは
1日に、何度も繰り返すくしゃみ、水のように流れる鼻水、鼻づまり、という花粉症と同じ症状が現れますが、別の病気です。 花粉症と同じくアレルギーの病気で、原因は、ハウスダスト、中でもダニやペットの毛が原因の場合が多いです。 通年性アレルギー鼻炎に対して、花粉症は、季節性アレルギー性鼻炎とも呼ばれます。
花粉症が直らないと言われる理由は
花粉症になったのは、その方の体が、花粉に異常に反応する「アレルギー体質」になってしまったからです。 そして、そのアレルギー体質は、死ぬまで続きます。また、80歳を超えるとアレルギー反応も弱くなってくると言われています。
混在する過敏症が花粉症を更に複雑にします
人それぞれ、
- 花粉症に「なる・ならない」といった違いがあります。
- どのような症状がでるかという「反応性」に違いがあります。
- アレルギー細胞(肥満細胞)がもっているIgE抗体の数も人によって異なります。(RAST検査で確認できる)
- アレルギー細胞が出すヒスタミン(花粉症の症状の原因となっている物資)の量に違いがあるため、IgE抗体の数とアレルギーの強さに関係がありません。
- 同じ量のヒスタミンが出ていても、受容体の数と感度が異なります。
- 鼻の形も鼻の病気の有無も異なります。
- 他のアレルギーを持っているかどうかも異なります。
- 粘膜の敏感さも異なります。
- 粘膜を支配している反射の強さも異なります。
これらを複合した結果が、花粉症として現れているのです。 また、かなりの割合で、他の鼻の病気や鼻過敏症がまぎれこみ、組み合わされた結果です。 なかなか直らない場合、複雑に、組み合された結果です。
アレルギーが原因では無い鼻炎でも、アレルギー治療薬はそれなりに効果があります。 ただ、あくまでもそれなりの効果のため、治療に満足できないことがあるそうです。
例
- 血管運動性鼻炎
においなど、ちょっとした刺激で鼻の粘膜が敏感になる
- 好酸球増多性鼻炎
アレルギー症状は無いが、好酸球だけが増える(実際には症例が多い)
- 味覚性鼻炎
刺激性の多い食べ物を食べた時に鼻水がでる
- 冷気吸入性鼻炎(スキーヤー鼻)
寒い空気を吸うと鼻がムズムズする
- 老人性鼻炎
老年になると鼻水が出やすくなる
- 薬剤性鼻炎
降圧剤や噴霧薬で鼻づまりになる
- 心因性鼻炎
ストレスやうつ、神経症の症状が原因
- 妊娠性鼻炎
妊娠中期に起こる
- 内分泌性鼻炎
甲状腺の機能低下が原因
- 寒冷性鼻炎
手足が急に冷えると鼻がつまる
- 乾燥性鼻炎
冬、部屋を温めて、空気をカラカラにすると鼻がつまる
治療
病院に行く前に
問診対策をして、想定される質問の答えをメモなどをして、医師の質問に適切に答えられるようにしておきましょう。
問診で、聞かれる可能性のある主な質問
- どのような症状があるか、その中で一番つらいのは何か
- その症状はいつから始まったのか、何年前から経験しているか
- どんなとき(季節、時間帯、天候など)に症状が悪化するか
- 現在まで、どのような検査と治療を受けてきたか、使ってきた市販薬とその効果は
- 花粉症以外のアレルギーの病気はあるのか
- 家族や親族にアレルギーの病気の人はいるのか
- お住まいの住所、どんな家で、周りの様子は、といた住宅環境、職場環境、ペットは飼っているかなど
診察
鼻粘膜検査
鼻の中の粘膜を調べる検査です。同時に他の鼻の病気(副鼻腔炎、鼻のポリープ、鼻中隔湾曲症)がないか確認します。
健康状態 | 粘膜の色 |
---|---|
健康な場合 | ビンク色 |
花粉症 | 赤色(炎症?) |
通年性のアレルギーやハウスダスト・アレルギー | 白っぽい |
経験のある耳鼻科医の場合、問診とこの鼻粘膜検査で花粉症かどうかはほとんど判断できるそうです。
好酸球検査
鼻汁、あるいは、目の結膜の分泌物(目の痒みがひどい場合)を顕微鏡で確認します。 白血球の一種の好酸球が増えているとアレルギーが原因であることが分かります。
RAST検査
血液検査です。花粉症を起こすことがわかっている幾つかの物質と反応させ、 その物質に対する「特異的IgE抗体」が増えているかどうかを調べる、血清抗体検査で、どの花粉がアレルギーの原因かを特定します。 血液を検査機関に送付し、分析を行うので、結果が出るまで2~3日かかります。
皮膚反応検査
皮内に花粉症を引き起こす幾つかのエキスを注射し、15~20分安静にして、どんな反応があるか見る検査です。 アレルギー反応があるエキスを注射したところが、虫刺されの様に赤く腫れます。 赤く晴れたところを「膨疹」といいその直径と周りの赤い部分(紅斑)の大きさで、アレルギーの強さを判定します。
素早く確認できること、検査価格が安い利点があります。同時に複数の試験が行えます。 検査した部分を引っ掻いたり、こすったりしないように注意する必要があります。 また、検査前1周間は、薬の影響を除外するため、アレルギーや風邪の薬を使わないでおく必要があります。 注射の代わりに、皮膚を引っ掻いて、そこにエキスを垂らす、スクラッチテストも原理は同じです。
鼻誘発テスト
花粉を染み込ませた、小さな布やろ紙を鼻に入れ、 どんな症状が、どの程度出るか、調べます。痒み、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの有無や程度を確認します。
鼻アレルギー診断ガイドライン
鼻誘発テスト、皮膚反応検査、鼻汁好酸球検査の結果から、花粉症の病型や程度を分類します。
アレルギー日誌
毎日の症状や服薬、どんな治療をしたか、どんな生活をしたか記録していきます。 簡単な記録でも毎日続けることで、病気の状態がはっきりわかってくるそうです。
根治
減感作療法
現時点では、花粉症を根治するには、「減感作療法」しか選択肢がありません。実施できる医師や施設は限られているようです。
減感作療法(特異的免疫法)
減感作療法は、イギリスのヌーン医師が、1922年に始めた古い治療法です。
抗原(花粉症の場合は花粉エキス)に少しずつ体を慣れさせ、抗原に対して、症状を起こしにくくします。週に1~2回ぐらいの割合で、 抗原を薄めた液を注射し、液の濃度と注射の間隔を変えながら、免疫をつけて行く治療を長期間続ける治療方法です。
卵アレルギーの子供に、どれだけ食べても安全かを確認するために、医療機関で、 その子供に玉子を食べさせる映像をテレビで見たことがあるあります。 それから判断すると、アナフィラキシーショックも設備が整った施設で、 医療関係者の管理のもと発生させるのは、それほど、危険では無いのかもしれません。
減感作療法は、WHOや日本のガイドラインも存在し、それによると、5歳以下の患者には、 副作用が出やすいので治療の際に気をつけたほうがいいこと、 原因となる抗原がわかっているものにだけ行ったほうがいいと書かれているそうです。
減感作療法で効果が高いもの
- 花粉症
- 刺性昆虫(ハチなど)
- アレルギー性の喘息
花粉が飛散する、少なくとも3ヶ月前に治療を開始する必要があります。 スギ花粉では、遅くても10月には治療を開始する必要があります。
減感作療法はなぜ効かないと言われているのか
減感作療法で「効果がある花粉症」と、「効果がない花粉症」が存在し、 効果がない花粉症に対しても治療を実施していた時期があるためと書かれていました。
減感作療法は、アレルギーが原因の花粉症にしか効果がありません。
花粉症は、アレルギーと過敏症によって症状が発生します。
花粉症と似たような症状を起こす別な病気を紹介しましたが、それに加えて、 過敏症の原因の割合が高い場合は、アレルギーに由来する部分が根治しても、 過敏症で、同じような症状が現れるため、結果として治りません。
過敏症の例
- お風呂あがりに冷たい空気にあたったり、冷房が効いた部屋に入った時、くしゃみがでる
- 一度くしゃみが出ると連続する
- ラーメンを食べると鼻水が出る
- あなたは、あせかきですか
これらの症状は、アレルギーが原因ではありません。 しかし、花粉症の方の多くの方にみられ、これらが症状に直接影響してきます。 これが、筆者のいう「神経の過敏性」で、治療の結果に個人差が出る原因の1つです。
「神経の過敏性」が主な原因の患者を除いて治療すると、その80%で治癒と症状の軽快が達成できたそうです。 「神経の過敏性」の過敏性が主原因かどうかを判断してから治療をしてもらえば、 効果の無い治療を避けることができそうです。
もう一つの原因が、治療を実施する医師が、アナフィラキシーショックを恐れて、 治療に使うエキスの量が少ないと、抗原を体に対応させる免疫の変化が発生せず、 結果として効果が見られないことがあるそうです。 経験のある専門家が、アナフィラキシーショックを想定して、 それが発生しても大丈夫な手段と体制を用意して治療に当たる必要があると書かれています。
複数のアレルゲンを持っているときは、同時に治療する
患者が複数のアレルゲンを持っている場合は、同時に治療を行います。
安定した品質の抗原
治療の際には、安定した品質の抗原が必要です。
安定した抗原が存在
- スギ
- 「シダトレンⓇスギ花粉舌下液【ぜっかえき】」鳥居薬品<
無味無臭だそうです。
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- 「シダトレンⓇスギ花粉舌下液【ぜっかえき】」鳥居薬品<
- ダニ
※ 舌下減感作療法「SLIT(スリット)減感作療法」は、調べた時点では、保険適用外の治療のようです。2014年に保険適用されています。
舌下免疫療法は、花粉症の完治の可能性がある治療法です。かつては保険適応外の治療法であるため年間7万円の費用がかかりますが、平成26年6月からは3割負担となりました。
安定的に作成(量産?)されている皮下免疫療法(SCIT)用アレルゲン
- ハウスダウト
- ブタクサ
舌下免疫療法用の舌下錠が開発されていないアレルゲンに関しては、アレルゲンを皮下に注射する皮下免疫療法が行われます。
安定して作成されている抗原がない場合は、大学病院のようなところで、倫理委員会を通してからでないと治療を実施できません。 抗原が入りづらいこと、保険点数が低いので、病院側の経営上のメリットが存在しないと書かれていました。
ヒノキやイネでは、インターネット上では検索できませんでした。 今後、他の花粉についても、減感作療法が行えるようになることを期待しましょう。
施設検索
スギ花粉症・ダニアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法施設検索
舌下免疫療法相談施設検索|トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ|鳥居薬品のアレルゲン免疫療法専門サイト
関連情報
日本アレルギー学会「アレルゲン免疫療法(減感作療法)eラーニング」
一般社団法人日本アレルギー学会: 「アレルゲン免疫療法(減感作療法)eラーニング」開設のご案内
舌下減感作療法「SLIT(スリット)減感作療法」
※ 舌下減感作療法「SLIT(スリット)減感作療法」は、調べた時点では、保険適用外の治療のようです。
減感作療法が、皮膚にアレルゲンを注射するのに対し、舌下減感作療法は、アレルゲンは舌下錠担っているので、 患者の身体的負担は少なくなります。既に、実施されていますが、 書籍内では、これからの治療として紹介されており、 そこでは、アレルゲンをグリセリンと混ぜ、パンに含ませ口に含むという方法で紹介されていました。 舌下と言うのは、口に含むという意味で、無理に舌の下に入れる必要はないとのことです。
漆職人の方は、以前からかぶれるのを防ぐために、弟子入りしてきた新人に、漆を薄めて飲ませていました。 それにより、普通なら起こるアレルギー反応がおこらず、結果としてかぶれなくなります。 これを経口免疫トランスレスと呼ぶそうです。 子供に多い卵アレルギーも少しずつ食べていく似た方法で改善させる方法があるそうです。 卵アレルギーの方は、アレルギーの専門医に相談してみるといいかもしれません。
卵アレルギーが、少しずつ食べる量を増やしていくと治ることは知られたため、 スギ花粉を食べるという方法は早くから試されていたそうです。 結果として、スギ花粉は食べることでは効果がなく、口に含むのがポイントのようです。 ここまでこの記事を読んできた方なら、想像がつくと思いますが、 スギ花粉を個人の判断で直接くちに含むのは、スギ花粉の中のアレルゲンの量が分からないので、 アナフィラキシーショックを起こす可能性あります。 アレルギーに関する挑戦は、アレルギー専門医の管理下でないと、生命に関わる可能性があるのでやめておきましょう。 実際に、スギ花粉が含まれるカプセルを飲んだ後テニスをした女性がアナフィラキシーショックを起こし病院に運ばれたことで、 スギ花粉を含んでいる健康食品に注意書きが必要になったというエピソードがあります。 スギ花粉入りの健康食品には、気をつけてください。
トマトジュースが嫌いな方が、少しずつ飲む量を増やしていって飲めるようになったという話を効いたことがありますが、 これは、なにか関連しているのでしょうか?
読んでいませんが、舌下減感作療法「SLIT(スリット)減感作療法の本も出版されています。舌下減感作療法は、現時点では、ダニとスギ・アレルギーに対応しています。
2016-03-18 : CBC イッポウにて、皮下免疫療法と舌下免疫療法について紹介されました。
花粉症ワクチン
感染症のワクチンは、病原体の毒性をなくしたり、弱めたりするものを注射して、体に抗体を作らせ、その病気に罹らないようにします。 しかし、花粉症は、花粉と作用した細胞が出す物質によるアレルギー反応のため、感染症とは、仕組みが異なります。
体に害になる最近がやってきた時と、本来は害にならない花粉がやってきた時とでは、免疫の聞き方が全く異なります。 細菌の場合、 ヘルパーT細胞のうち、1型が働き、花粉の場合、2型が働きます。 そして、1型が増えると2型が減り、2型が増えると1型が減ります。
そこで、細菌感染が起これば、1型が増え、2型が減ることで、アレルギー症状は抑えられます。
生活環境が清潔になったので花粉症が増えたという説の裏には、このことを説明しているのかもしれません。
そこで、花粉症ワクチンは、抗原のスギ花粉の中から、花粉症を起こすアミノ酸部分を取り出し、毒性をなくした細菌のDNAに組み込みます。 これを注射すると、細菌感染と判断し、1型リンパ球を増やします。これが花粉症ワクチンの仕組みです。
BCGは、結核のワクチンですが、同じ仕組みで、アレルギー症状が軽減します。
http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/press/2006/20061218_1/20061218_1.pdf
BCGについては、自己診療になりますが、実施してくれる医療機関が存在します。
さいたま市 すずひろクリニック|トラベルワクチン・アトピー性皮膚炎・水いぼ・じんましん・リウマチ
花粉症ワクチンのニュースリリースがありますが、この説明と同じものかどうかは判断できませんでした。
http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/topics/2008/20080729_1/20080729_1.pdf
アステラス製薬が数回の投与でスギ花粉症を「根治」出来る「DNAワクチン」の日本発売を計画 /Amrit不老不死ラボ
https://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/-jrc2-lamp-vax.html
ペプチド減感作療法
アレルゲンの花粉に別なものを加えたり、ある物質を取り外したりしたものを使う方法です。
その1つが、ペプチド減感作用法です。 スギ花粉のアレルゲンから、アレルギー細胞と結びついて症状を引き起こすペプチドを取り外したものを使用します。 そのことで、このアレルゲンは、アレルギー細胞と結合しなくなるため、アナフィラキシーショックを気にせずに大量に投与できます。 それにより、安全で、効果が出るまでが早く、回数が少ない治療ができることが期待できます。
本によれば、ヒトでの治験が始まっており、2013年中には終了の見通しとありますが、 インターネットで間作をかけた限り、特にニュースリリースはないようです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsci1978/23/6/23_6_568/_pdf
抗IgE抗体療法
花粉症の症状の原因であるIgE抗体を体内で作成されるのを阻害する薬です。 治験では、素晴らしい効果が確認されたものの、薬の価格が高いため、実際の利用は難しいと考えられています。
ケア
ケアは、症状を緩和させる行為です、治すわけではありません。しかし、花粉症で、死に至ることはまずありません。 中程度以下の症状であれば、症状を緩和させることで、花粉シーズンを乗り切ることができます。
初期療法
毎年、激しい症状で悩んでいる患者さんにおすすめの治療方法で、現在の花粉治療の基本です。 副作用も生活の質も落とすことなく、花粉のシーズンを過ごすことができるそうです。
使用する薬
- 第2世代抗ヒスタミン薬(くしゃみ、鼻水、目の痒み[目薬])
- 化学伝達物質遊離抑制薬(くしゃみ、鼻水、目の痒み[目薬])
- 抗ロイコトリエン薬(鼻づまり)
- 抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬(鼻づまり)
- Th2サイトカイン阻害薬(慢性化している場合)
のうちからどれか1つ
場合によっては、
- ステロイド(炎症を防ぐ)(鼻づまり[噴霧薬]、慢性化している場合[噴霧薬] 、目の痒み[目薬])
を使用します。
花粉が飛び始める1週間前から飲み始め、花粉シーズンが終わるまで、飲み続けるものです。
鼻噴霧薬について
病院で処方される鼻噴霧薬は、効果が出るまで、1日~2日かかります。 鼻に噴霧した瞬間にすっと息が通るというものではないそうです。
一方、市販されている鼻噴霧薬は、血管収縮薬が含まれているので、噴霧した瞬間にすっと息が通ります。 しかし、血管収縮薬が含まれている鼻噴霧薬を頻繁に使用すると、 リバウンド現象が発生し、はじめの症状より悪化することが知られています。 市販の鼻噴霧薬は、1日に何度も噴霧するような使い方は避けましょう。
ステロイドの鼻噴霧薬は、有効性と安全性が確認されています。 一方内服薬のステロイドは、炎症を強力にストップしてくれるものの、副作用があるので長期間の利用はできません。 そして、ステロイド内服薬は、ドーピング検査に引っかかりますので、 スポーツ選手の場合は、診察前に医師に、スポーツ選手であることを伝えておきましょう。
花粉が飛び始める前に薬を飲み始める理由
スギ花粉の飛散は、2月前半から、後半にはじまり、開始時期がずれてもせいぜい1週間です。 そして、花粉症は、シーズン初めから強い症状が出るわけではなく、 繰り返し、花粉を吸い込んだり浴びたししているうちに、粘膜の過敏性が強くなり、どんどん症状が悪化していきます。 さらに、観測網が充実していますので、かなり正確な予想ができるようになっています。 そのため、予防的治療は有効です。
そして、「第2世代抗ヒスタミン薬」「化学伝達物質遊離抑制薬」は、飲んでから効果が出るまで、 1~2週間かかるそうなので、はやめに飲み始めるのは合理的です。
症状を抑制する仕組みは、アレルギーの発生する原因であるヒスタミンが、受容体に結合する前に、 それらの薬が先に、受容体と結びついて塞いでしまいます。 そのため、薬がなくなるまで、ヒスタミンは、受容体に結びつくことができないので、 アレルギー症状が抑えられると考えられています。 そのため、症状が出る前に飲み初め、花粉シーズンが終わるまで、飲み続ける必要があるそうです。
効果
盛期の症状を3分の1ほどに軽くできると言われています。
副作用の可能性
長期間飲み続けるので、副作用が心配になりますが、
- 第2世代抗ヒスタミン薬(くしゃみ、鼻水、目の痒み[目薬])
- 化学伝達物質遊離抑制薬(くしゃみ、鼻水、目の痒み[目薬])
- 抗ロイコトリエン薬(鼻づまり)
は、数ヶ月飲み続けても重大な副作用のほとんど発生しない安全な薬と言われているそうです。 そのため、花粉シーズンが終わるまで安心して飲み続けても問題ないと書かれています。
初年度は、効果が予想できません
本来薬は、症状に応じて量を調整するものです。しかし、この治療法は、症状が出る前に薬を処方するため、 初年度は特に適切な薬の量を指定するのが難しくなります。あなたに合った薬の量がまだわかっていないのです。
導入療法・維持療法
既に、花粉症の症状が始まってしまってから行う治療を「導入療法」と呼びます。 ステロイドを1週間ほど内服したり、鼻に噴霧してりして、炎症を抑えます。
炎症が抑えられたら、初期療法と同じ抗ヒスタミン薬などを、花粉シーズンの間続けます。これを「維持療法」と呼びます。
ヒスタグロビン注射:非特異的減感作療法
“非特異的減感作療法”とは、期間は限定されますが、すべてのアレルゲンに対してアレルギー反応を抑制してくれる治療法です。 非特異的減感作療法も減感作療法と同様に注射で行います。 よく使われる注射薬剤としてはヒスタグロビン、金製剤、MSアンチゲン、マクロライドなどがあります。
ヒスタグロビンは商品名であり、一般名はヒスタミン加人免疫グロブリン製剤と言います。 ヒスタグロビン注射は献血などで得られた人(ヒト)血液から免疫グロブリンを抽出し、 それにヒスタミン二塩酸塩を加え製剤化したものです。
花粉症の話2012 ヒスタグロビン注射 院長コラム|代官山パークサイドクリニック
副腎皮質ホルモンのデポ剤注射療法
「注射を1度打てば、1ヶ月近く花粉症が抑えられる」とい言われる治療法です。 数週間作用する副腎皮質ホルモンのデポ剤注射療法です。 使用するステロイドの製品名はケナコルトA、デポメドロールです。 長年このような治療を受けると、筋肉が萎縮したり、月経が不順になったり、大抵は糖尿病や、 高血圧を併発する重い副作用があるので、避ける必要がある治療法とういことです。ご注意ください。
http://www.shimonagaya.com/kenacortA.htm
まとめ
花粉症の根本治療が利用できることがわかり、花粉症の治療方法も日々進化してることが分かりました。
花粉症の中程度以上の症状の方は、花粉症の辛さから開放されるために、 減感作療法に対応できる病院で相談してみても良いかもしれません。 ただ、対応可能な花粉の種類がまだ少ないので、複数の花粉にアレルギー症状を持つ場合は、 効果があっても体感しづらいかもしれません。
減感作療法は、治療を受けられる地域や医療機関が限定されると思いますが、 取り扱いがある医療機関が近くにあり、スギ花粉の症状がひどければ考えてみる価値がある治療だと思います。 (医療機関によっては、他の花粉についても対抗可能なのかもしれません) ただ、医療機関の説明では、スギ花粉が飛ばなくなった後から、 10月までの間に治療を開始する必要があると書かれています。 興味があれば、書籍を読んでみたり、医療機関で相談してみましょう。
日本医科大学附属病院のホーム・ページで、著者の写真を見ることができます。
http://hosp.nms.ac.jp/shinryo/otorhinolaryngology.html
おまけ
本の中のコラムにあった、外国に行った時の表現方法です。
鼻水が止まりません。
I have a runny nose.
目がかゆいのです。
I have an itchy eyes.
涙が止まりません。
I have watery eyes.
くしゃみが止まりません。
I can’t stop sneezing.