『ピーターの法則』階層社会で平穏に生きていくために必須のバイブル
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ピーターの法則とはアメリカの教育学者であるローレンス・ピーターによって提唱された組織内の労働者に関する社会学の法則です。
「ピーターの法則」:
- 階層社会では、すべての人々は昇進を重ね、おのおのの無能レベルに到達する。
- やがて、あらゆるポストは、職責を果たさない無能な人間によって占められる。
- 仕事は、まだ無能レベルに達していない物によって行われている。
そこで、私たちは、階層社会に属する限り、自分がいずれ到達する「無能レベル」に備えておく必要があります。
そのために、階層化社会の仕組みや内部での評価方法を理解しておく必要があります。この本では、具体例を多くあげ、この「ピーターの法則」について詳しく説明しています。
まずは、階層社会での評価の仕組みを説明し、階層社会で生き残る注意点について説明されています。そして、階層が上がることで、いずれ、自分の適性が、平均より劣る項目で仕事をすることを強いられる仕組みについて説明しています。
「無能レベル」に達した際の不利益
「無能レベル」に達し、その状態で労働すると、「自分が仕事ができない」ことからくるストレスと「自分が仕事できない」ことに対する周囲の風当たりによるストレスにより、肉体的、精神的な障害が発生します。それをどのようにごまかして、生きて行くかについても説明されています。精神疾患や健康の悪化の原因が、「無能レベル」によるものに由来すると通常の治療が、無意味かつ有害になる可能性に付いても説明されています。
特に、「見かけだけの例外」として興味深い例とその効用について紹介されています。
「強制上座送り」
疑似昇進の1種です。「無能レベル」に達した方を、見かけだけの昇進を行い排除する例が紹介されています。現実では、買収されて子会社になった企業に、「無能レベル」の役員が送り込まれ、その結果、子会社が倒産するようなことが起こったりするので、注意深い運用が求められます。
「水平移動」
給与も肩書も同じままで、無害な部署に移動する。あるいは、「無能レベル」の方だけ残し、部下をすべて他の部署に移動します。
「ピーターの本末転倒」
「無能レベル」の上司のもとでは、結果より行動が重視されるので、きちんとルールに従った行動が重視され、結果が得られるかどうかは軽視される現象のことです。
「階層的厄介払い」
仕事ができる人材を「階層社会」のは会社として、放逐してしまう行為のことです。昇進を目指す方も、仕事ができ過ぎては本末転倒の結果が訪れます。「有能すぎるものの不幸」として紹介されています。
「親の七光り人事」
下の階層から順次、昇進していかないという点では例外ですが、スタートが異なるだけで、「無能レベル」に達するまで昇進します。その点では、「親の七光り人事」もピーターの法則から逃れることはできません。
「創造的無能」を確保
この本では、「創造的無能」を推奨しています。昇進を断ると一見、「無能レベル」を避けることができるように思えますが、階層社会では、昇進を断る人間を許容しないので、結果として、悪い状態になることが説明されています。
そこで、筆者が勧めるのは、自分の能力が最も活用できる階層を確保した後、「創造的無能」を手に入れることです。
仕事の能力が高くても、「机の整理ができず、書類が山積みになっている。」「奇抜な格好で会社に来る」「無精髭を生やす、ヨレヨレの服を着ているなど身だしなみが汚い」「奇行が目立つ」人には、「昇進の機会が来ない」ことに着目し、これらの人たちが無意識にやっているか、意識的に行っているのかは別にして、心地良い地位を維持していることを紹介しています。
私は、ここで、ノーベル賞受賞者の田中耕一さんを思い浮かべてしまいました。
ただ、この本では、根本的な原因の解決については、全く触れられていません。
この根本的な原因は、私は、「マネジメント信仰」と考えます。「管理する側が偉い」、「管理する側がより給与をもらうべきだ」という考えが根底にあることが原因だと考えています。
例えば、「芸能タレント」と「マネージャー」の関係では、「マネージャー」が「芸能タレント」より評価されたり、給与を多くもらうのでしょうか。それでは、「スポーツ選手」と「マネージャー」ではどうでしょうか?
一方、「営業マン」と「マネージャー」では、「エンジニア」と「マネージャー」ではどうでしょうか。収益を上げる人材が、管理する側より評価されたほうが自然では無いでしょうか。
つまり、前提となる階層社会そのものが原因であり、階層社会である限り、原因はなくならないのでは無いでしょうか。
当たり前と考えている社会構造もさまざまな視点で考えなおしてみると面白いかもしれません。階層社会で平穏に生き抜くためには、必読の書籍だと思います。