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韓国の不正横流し疑惑で話題なので、「フッ化水素酸の知識」を更新するメモ その2:微量分析

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無機化学系の知識が薄いので、ニュースで話題になっているこの機会に、インターネット上で簡単に入手できる程度の表面上の情報で「フッ化水素酸」に関する知識を更新することにした。

前回の記事で「フッ化水素酸」は、蒸留法を使って精製している可能性が高いことがわかったので、蒸留検討の際に必要となる微量分析について調べてみることにしました。

 

 

kukekko.hatenablog.comわかりやすいニュース記事を見つけたので貼り付けておきます。

www.fnn.jp

 

関連する業務に従事する予定はないので、英語の文献や特許などに関しては対象外とし、日本語で気軽に読めるインターネット上の情報から、推測程度の情報をまとめることを目的にしました。

全く、設備も経験がない状態から、フッ化水素酸の精製検討を行うための分析環境を整えるための予備調査を想定しました。

分析操作に向いた人

分析は、特殊技能です。手技だけでなく、分析に向いた性格も求められます。大雑把な人や、変化を求める人には、向いていません。

分析試料の前処理、データの解析に使用する、ばらつき、品質工学、多変量解析などの、確立統計関連の知識、フーリエ変換、サビツキゴーレイ(サビッキーさんとゴーレイさんが見つけた数式のことだけど、なぜか日本語では、錆びついている)などの数学、はては、光工学や電子工学関連などの知識も必要になることがある、高度な分野です。

しかし、そのような知識を活かせるのは、分析機器メーカーや分析受託企業だけです。あ!、薬品会社の臨床研究の解析部門も分析のスペシャリストが、優遇されている職場です。

一般には、そのようなスペシャル人材が分析を担当していることは、まずなく、分析作業だけを行う仕事は、ほとんどありませんので、通常は、技能的にも、性格的も向いていない人が、分析作業も行っていることがほとんどです。

精製検討と分析

精製検討するには、不純物があることが確認できないと精製検討できません。

精製検討は、条件を変えて、生成し、それぞれを分析し、条件と精製の関係を見つけていく作業です。そのため、無数に分析を行う必要があります。

コスト的、時間的な問題で、自前で分析環境を整え、検討する部門で分析できる体制を整える必要があります。外部に分析依頼をしていると、コスト的にも時間的にも現実的ではなくなります。

分析方法の確立

一般的な分析であれば、調べれば、方法は入手できます。その方法に従って分析を行えば分析出るはずです。

分析装置を使う場合は、分析装置メーカーに分析方法を問い合わせます。細かい分析条件が確立できなければ、分析装置メーカーに依頼すれば、有料、無料かは、別にして、分析方法や手順を確立して提示してもらえます。こちらも有料になりますが、分析受託企業に、分析方法を指導してもらうこともできます。社内に、分析方法を確立できる人材がいない場合には、有効な方法です。

基本的には、機器分析になるので、分析したい対象や分析したいものをキーワードを元に探すと、いくつかの装置が見つかります。

今回の目的はフッ化水素酸の中の微量不純物分析です。

インターネット上で、調べてみると。

これらの内容から、高周波誘導結合プラズマ質量分析計(ICPMS)、クリーンルーム、クリーンブース、クリーンベンチあたり必要であることがわかります。

つまり、場合によっては、分析装置だけでなく、建物から作る必要があります。(実際にはどうか知らないけど、クリーンベンチで対応できそうな気がする)

ICP-MS の原理 | アジレント・テクノロジー株式会社

ICPMS-2030 Top - ICP質量分析計(ICP-MS) : 株式会社島津製作所

ICP発光分光・質量分析:原理解説 :日立ハイテクサイエンス

 

このような情報が見つかります。もしかしたら、分析に関する書籍が存在するかもしれないので、関連するキーワードで検索をかけてみます。

そこから、

微量金属分析とその前処理技術」という書籍が存在することがわかります。

これらの情報を把握したあと、分析機器メーカーに問い合わせます。

分析に利用できる分析装置がない場合は、購入する必要があります。外部分析で対応する方法もありますが、分析費用は、外部分析の場合、絶対値の値を計測する必要があるため、1サンプル1元素に付き、おそらく10万円以上かかると思います。外部分析で行う場合、大量に分析サンプルを依頼する旨を伝えて、割引価格を提示してもらいましょう。

分析方法、必要な装置、見積もりの概算、ランニングコスト(試薬、消耗品、メンテナンス料、電気代)、税金(固定資産になるので、購入年だけでなくそれ以降も結構な金額が必要になる)、サービス拠点(コンビナートや大口顧客が近隣に存在すれば、サービスの対応が速くなる)

よく知らないので、わかりませんが、腐食性がある薬品の分析なので、特殊仕様になる可能性もあります。

簡単に測定できるのか、かなりの技能が必要なのかは、分析機器メーカーに聞いておいたほうが良いかと思います。

分析機器の購入の際は、機器の割引交渉は、販売価格の他に、メンテナンス料(無料メンテナンス期間)、指導料、分析方法・件の設定及び講習、機器メーカーが行うセミナーへの無料参加の権利などが交渉材料になります。

また、試薬メーカーに、フッ化水素酸の廃棄方法と費用に付いて問い合わせておきます。

すぐに技術確立というものの

汎用品の化学物質でも生産技術は、すぐには確立できません。

それぞれのエンジニアの技術や知識の差や専門の差は大きいので、一概には言えませんが、そうそう簡単にはできなさそうな気がします。

そもそも、フッ化水素酸は、フッ素化合物の出発物質なので、歴史が古く、取り扱っている企業もたくさんあります。エアコンや冷蔵庫で使用されるフロンやフッ素樹脂などフッ素化合物を製造しているプラントでは、フッ化水素製造プラントを持っていてもおかしくありません。おそらく自社生産設備を持っています。

4. 旭硝子のフッ素化学とその展開 Res. Reports Asahi Glass Co., Ltd., 57(2007)91-95

高純度フッ化水素酸製造企業もいろいろな国で自社工場や合弁会社の工場を持っているので、これからの参入は難しいと思います。

実際に、台湾や中国の工場に買い付けを行っているようです。

そして、フッ素化学のバックグラウンドがない企業が、高純度フッ化水素酸の生産を始めるには、道程が長く、リスクも大きいと思います。

この状態では、いつはしごを外されてもおかしくないので、新たに、技術開発や生産設備導入を行うリスクは、誰も取ることができないと思います。そもそも、約束が守られない国では、たとえ国内企業でも、長期投資はできません。

今回の出来事、発生した理由を考えなければ、結果的に、半導体の需要減速に対応するための生産調整を日本政府がお手伝いするという経済政策でしかないのかもしれません。

そう言えば、フッ化水素酸と同じく半導体製造に使用する超純水製造用のフィルター類の世界シェアってどうなってるんだろ?

 

kukekko.hatenablog.com

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