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神戸製鋼所問題で考える品質管理問題の闇

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今回の問題でマスコミを通じた世間への露出が増えた「神戸製鋼所 会長兼社長 川崎博也」さんの会見映像を見た。
神戸製鋼所の人材の厚みを感じました。人材の厚いときにたまたま問題が発生したのか、人材が厚いから問題を公にできたのは不明ですが、東芝問題のようにグダグダにはならない気がしました。

 

さて、今回焦点の当たった品質問題ですが、世間的には漠然としたイメージしか存在しない、そして、専門的には、まだまだ未開の闇の世界と考えたほうがいい分野です。お金と時間と生産数量が必要な上、製品差別化の柱なので最近の技術は公開されないと考えて間違いありません。

では、現在公開されている品質工学のアレヤコレヤは、どうして公の技術になっているのでしょう?
いろいろ推測してみます。あくまでも、推測です。

トヨタカンバン方式の産みの親である、タグチメソッドで有名な、田口源蔵氏は、その行動から社内に敵が多く存在し、自分が引退した際、部下が不遇になると考えました。そこで、自分が引退する前に、品質コンサルタントを目的とする会社(組織?)を設立し、部下の雇用を確保しました。(会社名不明?覚えていない)
そこから、自動車部品や機械部品メーカーを中心に品質管理技術が伝播しました。同じ部品を数千、数万個延々と制作する仕事に対する品質管理のノウハウが脈々と蓄積していきました。

日本の品質管理関連の公開されている技術のほとんどは、トヨタパナソニック由来です。基本、機械部品の製造、機械部品の組立分野向けのものです。多少、電子部品にも展開されていると思います。ほかの分野の情報は、ほぼ、ありません。

では、その他の分野ではどうなっているのでしょうか?

学問的な体系はおそらく存在しません。神戸製鋼所の問題でマスコミの方が「外部の専門家による監査」をしないのかと発言している場面がありましたが、これを実行しようとすると実質的には「外部の素人による監査」になるはずです。

品質管理は、基本的に個体に対するもので、生産量の多いものに効果を発揮します。

機械部品や組立分野でも生産数が少なければ、品質管理手法はほぼ意味を持ちません。丁寧に作って下さいとか、きちんと作るためには、と言った話にしかなりません。

液体や気体などの数えられない物では、品質管理で学問的な体系は、以前調べた範囲では見つけることができませんでした。
機械部品の製造、機械部品の組立分野向けの品質管理手法を導入するには、バッチが少なすぎるのです。

例えば、1000食のカレーを提供するカレー屋さんでも、カレーは、1つか2つの鍋で作成します。この場合のバッチの数は、1つか2つです。

液体の製品では、生産量が大きくなれば、そのバッチを大きくし、結果として、バッチの数は減ります。カレーの例では、鍋を大きくします。1日1バッチ作ると、休みなく1年作成しても365バッチです。統計的手法を用いるにはサンプル数が少なすぎるので、統計的手法は意味を持ちません。
また、水道の水のように、連続的に作るものは、全く別の考えが必要になるはずです。具体的な考え方は私は知りません。

今回の神戸製鋼所のような金属製品の場合は、バッチ式で作っている場合は、それほど多くのバッチを扱っていることはないと思います。よく売れる製品でも、数日で1バッチあたりだと思います。あるいは、連続式で作っていると思われます。金属製品は、その成分比だけでなく、冷却条件により結晶系が変化するので製品の品質が変化します。成分分析や機会強度の分析は、時間とお金がかかります。

一時期、ISO9001などの外国の文化の流入により、技術者の感と経験、つまり、パターン認識で対応していたものを数値化して管理する必要が発生しました。その際に、営業側の判断で、値を保証しない代表値が、値を保証する必要のある保証値に変更されました。
その際に、生産技術面での検証や分析装置や人員の充足を行えれば問題がなかったとおもうのですが、「ISO9001規格を取得したので、製品価格が1.5倍になりました。」と顧客に提示する事はできません。結果、分析装置や人員の充足が不十分なままで運営される状況が容易に推測されます。そうであれば、それまでの分析管理体制のままで運営するとこれまでの分析体制でしか運営できません。

流行りに流されて導入した無計画な仕組みは、導入した人ではなく、その後の誰かが、泥水を被って現実とすり合わせる必要があります。
私は、現実とすり合わせる決断をした人を賞賛したいと思います。