Fusion360で、ローレット目をモデリングする方法を考える。その1、平目
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レンダリング機能などの表示機能が充実してくると、ローレット目など、今までは、3D-CADでは、モデリングしなかった形状もモデリングしたくなります。 ローレット目は、どういったものなのか調べ、3D-CADを使って、ローレット目をどうモデリングすればいいのか考えてみました。
規格を確認
ローレット目は、JIS B 0951-1962で規定されています。
ローレットの種類
平目と綾目が存在します。
金属加工の場合は、転造、あるいは、切削で加工されます。それぞれの加工向けに、切削駒、転造駒が販売されています。
形状・寸法
ローレットの形状は、加工物の直径が無限大にナットと仮定した場合の溝直角断面が規定されています。
歯車と同じく、モジュールという概念で表現されています。歯車の歯を、ローレットの山と考えれば良いようです。
歯車で使われる「モジュール(m) = ピッチ円直径(d) / 歯数(z)」ではなく、 「モジュール(m) = 正面ピッチ (t) / π (円周率)」が使われています。
正面ピッチ(t)とは、ピッチ円上で測定した、隣り合う歯と歯の距離になります。
ピッチ円は、歯の山と谷の中間を結んだ円になります。
ローレットの寸法
寸法の一覧です。
モジュール(m) | 正面ピッチ (t) | 山と谷のラウンド(フィレット(r)) | 山の高さ(h) |
0.2 | 0.628 | 0.06 | 0.132 |
0.3 | 0.942 | 0.09 | 0.198 |
0.5 | 1.571 | 0.16 | 0.326 |
ローレット目の呼び方と例
平目m0.5
綾目 m0.3
番手
モジュールではなく番手で表現される場合もあります。
番手 = 25.4 / ( π(円周率) × m )
転造加工の場合のブランク直径(加工前直径)
平目の場合
D = n × m
D:ブランク直径、n:山数(整数)、m:モジュール
綾目の場合
D = n × m / cos 30°
モジュール(m) | 0.5 | 0.3 | 0.2 |
m / cos 30° | 0.577 | 0.346 | 0.230 |
切削加工の場合のブランク直径(加工前直径)
平目の場合
D = n × m + h×2
綾目の場合
D = n × m / cos 30°+ h×2
モデリング
規格を確認したところで、モデリングしてみます。例として、直径9mm円柱にローレット加工を行う場合を考えます。
平面ピッチ(t)を使用したモデリング
スケッチします。
押し出します。
スケッチします。
円柱より少し小さい円を描きます。この寸法差が、hに当たります。 そのため、先ほどの表より、平目(m0.5)なら、0.36、綾目(m0.3)なら、0.198になります。 これは、ピッチ円になります。
続いて、円柱の外側の円との距離が2倍の円を描きます。
この円は、歯車でいう歯底円、つまり谷を結んだ円になります。
描いた両方の円を選択し、右クリックしてメニューを表示し、コンストラクションをクリックし、作図線に変更します。
中心から、円柱の外形線まで2本の直線を描き、作図線に変更します。
作図線の交点はスナップできないようなので点を配置します。
2点間の距離を指定します。
このままだと2点間の水平距離を指定することになるので、右クリックして、位置合わせを選択し、2点間の直線距離に変更します。
この寸法は、ピッチ(t)に当たります。平目なので、先ほどの表を読み取り、1.571にします。綾目の場合は、0.942になります。
角度の2等分線を描き、作図線に変更します。
スケッチします。
ミラーで複写し、外形線側でスケッチを閉じます。平目の基準プロファイルが作成できました。
作成ドロップダウンから、押し出しを選択し、押し出します。
※範囲で終点を選択すると、テーパー角度が表示されました。ビックリです。 勾配付きの押し出しはできたのですね。気が付きませんでした。 選択できない機能がグレーアウトするのではなく、表示されないので、 いろいろな機能に気がつくことができないデザインになっています。注意が必要です。
作成ドロップダウンから、パターン、円形状パターンで複写します。
パターンタイプでパターン面を選択し、複写する面を選択します。 複写回数の選択は、「歯数(z) = ピッチ円直径(d) / モジュール(m)」で求めることができます。
今回の場合は、「(9 – 0.326)÷0.5= 17.348」なります。
拡大してみると、山がきちんと作成されていないことがわかります。この方法で、モデリングしてはいけません。
17の場合でもやはりきっちりと作成できません。
歯数(z)を使用したモデリング
歯車と同じように、歯数を使ってモデリングします。
まず、歯数を計算します。「歯数(z)=ピッチ円直径 ÷ モジュール(m)」で計算できます。
ピッチ円直径は、「ピッチ円直径 = 外形線(歯車では、歯先円直径)- (谷の深さ(2h)(歯車では、全歯たけ)÷2)」で表されます。
ここで、ローレットの寸法の表より、モジュール 0.5の時の rは、0.16、hは、0.326であることを確認しておきます。
今回は、ピッチ円直径は、「9 – 0.326 = 8.674」になります。
そこから、モジュールで割ることで、歯数が求められます。「8.674 ÷ 0.5 = 17.348」と半端な数になります。
そこで、モジュール0.5では、歯数は、17として考えモデリングすることになります。 しかし、現実問題として、このままモデリングを行うと、実際に生産する際には、トラブルが発生しそうです。
表にある、0.2と0.3のモジュールに付いても検証して、よりきりの良い数値に近いモジュールを選択したほうが良さそうです。
そう考えて計算してみました。
すべて、端数になり、ちょうど良い値がありません。
本来は実際の加工をどうやっているか確認すべきですが、モデリング手法の検討のみで、実際に制作するわけではないので確認する方法がありません。
そこで、実際に、販売されているローレット駒のモジュールを調べることにしました。
販売カタログからは、フィレット半径[r]と高さ[h]が取得できません。
※購入実績があれば工具メーカーで情報が入手できる可能性があります。
そこで、JISの表から、モジュールとの関係をグラフにしてみました。その結果、線形の関係であると考えて良さそうです。
これを元に、市販のローレット駒ついて考えてみました。
その結果、外形9の円柱に平目ローレットのモデリングを行うには、0.51あるいは、0.3のモジュールの値を使うと良さそうです。
※ 加工材の外形とピッチの目安を指定して、それに適したモジュールの駒を特注するスタイルなのかもしれません。 あるいは、実際の加工は山と谷の形状が変化するだけで特に問題なく加工できる可能性もあります。
準備が整いました。m0.51の値で、先ほどのモデリングを修正します。
先端の形状がおかしいです。これは先程のスケッチのt(1.59)に相当する値を直線距離でしている誤差による可能性があります Fusion360では、円弧の距離は使用できません。別の方法でスケッチする必要があります。
山と山の距離を角度で指定することにしました。21.2は、360÷17です。
今度は、うまく行ったようです。
完成です。
せっかくですので、レンダリング作業スペースで色を付けることにします。
外観を選択し、ライブラリから、真鍮-艶出しをモデルにドロップします。